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MMHI plus No.9<ストレスチェック制度の導入準備と体制づくり>

ストレスチェック義務化を定めた改正労働安全衛生法の施行が12月に迫る中、MMHI+Banner.png

先月15日、「ストレスチェック制度」の具体的な運用方法を定めた

省令、告示、指針、実施マニュアルが厚生労働省より公表されました。

今回は公表された内容をもとに今後、導入準備を進める上での

ポイントをまとめてみましょう

 

 

ストレスチェック制度の概要

あらためて、平成27年12月1日に施行されるストレスチェック制度の概要を確認しておきましょう。

●制度の目的

・主な目的は「一次予防」(労働者のメンタルヘルス不調の未然防止)
・労働者自身のストレスへの気づきを促す
・ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる

●制度の枠組み

・常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)
  を実施することが事業者の義務となる。 (従業員数50人未満の事業場は制度の施行後、当分の間努力義務)
・検査の結果は医師、保健師等の実施者から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止。
・検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施することが
  事業者の義務となる。この申し出を理由とする不利益な取り扱いは禁止。
・面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となる。
・ストレスチェック結果の集団毎の集計・分析及びその結果を踏まえた必要な措置は努力義務であるが、実施すること
  が望ましい。

●ストレスチェック制度の主な流れ

ストレスチェックの流れ2.png

 

導入に向けての第一歩 ~ 計画づくり

上の流れに示したように、事業者はまずストレスチェック制度についての方針を表明し、衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法や実施状況及びそれを踏まえた実施方法の改善等について調査審議を行わせることが必要です。その結果をふまえ、ストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、これをあらかじめ労働者に対して周知することが求められています。


<調査審議で検討すべき内容>


 ①ストレスチェック制度の目的の周知方法
 ②実施体制 (実施者、共同実施者・実施代表者、その他の実施事務従事者の選任、明示等)
 ③実施方法 (使用する調査票、高ストレス者の選定基準、ストレスチェックの実施頻度・時期、
                        面接指導の申し出方法等)
 ④ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
 ⑤ストレスチェックの受検の有無の情報の取り扱い
 ⑥ストレスチェック結果の記録の保存方法
 ⑦ストレスチェック、面接指導及び集団毎の集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
 ⑧ストレスチェック、面接指導及び集団毎の集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
 ⑨ストレスチェック、面接指導及び集団毎の集計・分析に関する情報の取り扱いに関する苦情の処理方法
 ⑩労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
 ⑪労働者に対する不利益な取り扱いの防止


これらの項目はそれぞれに、制度の趣旨にのっとりその要件やあるべき方向がガイドラインとして法令によって示されています。

詳細は、厚生労働省報道発表資料 、およびページ下方のリンクから「ストレスチェック制度に関する省令」、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づきj業者が講ずべき措置に関する指針」、またこれらをベースにまとめられた「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」をご参照ください。

成否の鍵を握る実施体制づくり

この中で制度導入の成否を大きく左右するのが、②の実施体制の整備です。ストレスチェックの実施体制は以下のような枠組みで整備を進めることが求められています。

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事業者は、ストレスチェックを実施する義務がありますが、一方でチェックの結果や受検の有無などが労働者の不利益につながらないようにするため、人事にかかわる権利をもつ者は実施に関わることができません。

そこで重要になるのが「実施者」の選任です。ストレスチェックの「実施者」は次に挙げるいずれかの者でなくてはなりません。

 ・医師または保健師
 ・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師または精神保健福祉士

「実施者」は実際のチェックの実施のみならず、事前の企画や評価基準の設定などにも関わります。したがって制度の趣旨から言えば、日頃から職場の保健活動に携わっている産業医や保健師などがこの実施者を務めるのが最も自然な配置と考えられます。しかし、現実には産業医の勤務状況、契約関係などから必ずしも職場の産業医が実施者を務められるケースばかりではありません。その場合、は上記要件に該当する人材を他に求めなくてはなりません。

同時に、職場の人数規模、実施方法などによっては、実施実務を補助する「実施事務従事者」も必要となります。この業務もプライバシーに関わる情報を扱うため、適切な組織、人員の確保・管理が求められます。

また、結果に基づく面接指導の申し出に対しても、職場の産業医が対応可能な場合は良いですが、産業医がすべての面接指導希望への対応が困難な場合は、他に面接指導を行う医師の確保も必要になります。

このように、実施体制づくりにおいては、すべてを社内の人員体制で行うのか、外部の人材や組織との連携で行うのか、可能な部分すべてを外部の支援機関に委託して行うのかという判断がまず必要です。

現実には、上述の検討事項の③に掲げた「高ストレス者の選定基準」のように、ストレスチェックの内容やメンタルヘルス・マネジメントに精通していないと的確な判断が難しい点があること、また実施の流れや結果の取り扱いや管理など、細かなガイドラインが設けられている場合が多いことなどから、外部の専門支援サービスの活用も有効な選択肢になるでしょう。

職場のメンタルヘルスを見つめる好機に

以上の、ストレスチェック制度の導入に先立つ事前の調査審議、それを通じた実施計画の策定と実施体制の確立が、12月の法施行に向けての準備のもっとも重要な課題と言えるでしょう。

つい「年に一度のチェックの実施」という“点”のイベントと捉えがちですが、厚労省の示す指針では、ストレスチェック制度を職場の総合的なメンタルヘルス対策の中に位置づけて、全体的な計画のもと、実施・評価を重ねて継続的に取り組むことを求めています。

実際に、ストレスチェックがトラブルの発生予防や職場環境改善に対して有効に機能するかどうかは、職場全体のメンタルヘルスへの取り組み状況・姿勢に大きく関わってきます。ストレスチェック制度の導入を、ぜひ職場のメンタルヘルスを総合的に見直す機会として捉え、健康な組織づくりに活かしていっていただければと思います。