法施行まで半年を切ったストレスチェック義務化。
導入に向けて具体的な検討を本格化させている会社も多いようです。
義務とはいえ、せっかく導入する以上は十分な効果・成果を求めたいもの。
そこで今回は、導入検討に当たって考慮しておきたい
ストレスチェック導入の成功と活用のポイントについて考えてまいります。
POINT1 事前の周知とコミュニケーション
まず最初に考えなくてはならないことは、事前に従業員に対して、ストレスチェック制度の趣旨や目的、内容について十分コミュニケーションを図り、理解を得ておくことです。
従業員にとっては、会社から通知されるストレスチェックは、「会社が、自らの目的のために行うのではないか、結果を利用するのではないか」と受け取られがちです。それでは従業員の不安や警戒心が生まれ、ストレスチェックへの回答に消極的になったり、質問に対する回答が歪められたりする可能性が大きくなってしまいます。ストレスチェックの位置づけを十分に理解してもらい、安心して積極的に受診してもらえる環境づくりがまず大切です。
<事前周知のポイント>
○ストレスチェック制度の位置づけ(健康診断と同様、法的義務として実施)
○目的(各自の気づきを得て、セルフケアにつなげる)
○実施体制(医師等が実施者になり、事務従事者にも守秘義務がある)
○会社は結果が見られない(結果は実施者が保全、閲覧は本人の承諾が必要)
○高ストレス者は医師による面接指導が受けられる
(面接指導の結果、指導医から事業者に処遇改善意見を提出)
○結果は組織毎の集計分析を通じて環境改善につなげる(努力義務)
POINT2 受検率の確保
せっかくのストレスチェックも未受検の従業員が多いと、一次予防という目的に対して十分な効果が発揮できません。また未受検が多いほど集団分析の精度も低下することになります。また、職場ごとの受検率に大きなばらつきが生じることも好ましくありません。全員受検をめざし、一人でも多くの従業員が受検するようコミュニケーションを図る必要があります。
<受検率確保のポイント>
○事前周知の徹底(特に自分のためであること、プライバシー保護を強調)
○未受検者への受検勧奨
○受検の「命令」「強要」「受検しないことに対する不利益な扱い」は禁止
POINT3 高ストレス者へのフォロー
ストレスチェックを実施しても、その結果に基づいた適切なケアが行われなくては不完全なものとなってしまいます。このストレスチェック制度では、高ストレス該当者には、医師による面接指導が受けられることが伝えられ、実施者から面接指導の勧奨も行われます。しかし、医師による面接指導の申し出は事業者に対して行うため、自分が高ストレス該当者であることが知られる、また個人のストレスチェック結果が伝わることなどから、申し出を行わない人も多く残ることが考えられます。その中にも深刻なストレス状況を抱える人がいる可能性があり、より広いフォロー、支援の環境を整えることが求められます。
<高ストレス者フォローのポイント>
○医師による面接指導の勧奨(実施者による)
○会社を介さず利用できるカウンセラー等の相談窓口の情報提供、相談勧奨
○自分でできるストレス対策、生活環境調整などセルフケア情報の提供
○申し出の「命令」「強要」「申し出を行わないことに対する不利益な扱い」は禁止
POINT4 組織改善への活用
全従業員を対象に共通の条件の下で実施するストレスチェック。これは個人の気づきとセルフケアの向上が主眼の制度ではありますが、その結果を集団的に分析し、職場のストレス環境改善に役立てることが努力義務として定められています。メンタルヘルス対策のみならず、組織活性化の観点からもこの機会を利用しない手はありません。ストレスチェック結果の集団分析を足がかりとして、さらに詳細な情報収集や実態把握をすすめ、全社を巻き込んだ改善への取り組みに活用することが期待されます。
<組織改善への活用のポイント>
○集団分析の実施(職場状況の定点観測として)
○集団分析の結果に基づく情報収集・実態調査
○業務改善、労務改善、研修・教育など多面角的な施策展開
ストレスチェック制度導入の効果を最大限に高めるためには、導入準備にあたって以上の各点を考慮しつつ、社内体制づくり、情報共有を行うとともに、利用する外部プログラムの検討、パートナー機関の選定を進めていくことが大切です。